本研究では、植物内における光合成能力(最大光利用効率)のマッピング法の開発をめざし、本年度は主に、Photochemical Reflectance Index(PRI)画像計測によるPSII最大量子収率推定法の検討を行った。まず、昨年度構築したPRI画像計測システムに、1)照明光源をより高く設置し散乱光の当たる範囲を拡大する、2)測定対象葉とカメラとの距離を近づけ解像度を上げる等の改良を加え、PRI画像計測における安定性を評価した。実験室内環境においてPSII量子収率が変化しにくいポトス(Epipremnum aureum cv. ‘Lime')を用いて、本システムのPRI画像計測における安定性を調べた結果では、PRI値が±5%(SE)の精度で再現できた。また本システムでは、バレイショ(Solanum tuherosum L.)培養小枝物体に対し、一度の画像撮影で4枚程度の葉のPRI計測が可能であった。 次に、バレイショ培養小植物体葉に暗処理を施した後、非常に弱い光(光合成有効光量子束密度でO.1μmolm^<-2>sm^<-1>以下)を照射した時のPRI値を画像計測し、PSII最大量子収率を示すクロロフィル蛍光パラメータFv/Fmとの関係を調べた。その結果、強光処理により一時的にFv/Fmを低下させた場合のみならず、温度条件や培地条件によりFv/Fmを変化させた場合においても、暗処理後弱光下で測定した培養小植物体葉PRIとFv/Fmには相関が認められた。このことは、バレイショ培養小植物体葉において暗処理後弱光下で計測したPRIは、PSIIの最大量子収率に対応している可能性があることを示唆するものであり、培養小植物体における光合成能個体内マッピングヘの応用の可能性が示唆された。
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