研究概要 |
本研究は、放牧草地の草量や植生など草地構造のパラメータと野外観測用可視・近赤外分光放射計(ポータブルスペクトロメータ)(FieldSpec Pro,測定範囲350-1050nm)で測定した分光反射率との関連を検討することで非破壊的に放牧草地の草地構造を評価する方法を確立するとともに、衛星画像データ(ASTER)との関連についても検討する。 調査は2006年9月19日-21日、北海道十勝管内4町(浦幌、豊頃、池田、幕別)の公共育成牧場で行った。各牧場内で植生が「良い」および「悪い」牧区を5か所ずつ選定し、各牧区内5点でFieldSpecを用いて分光反射率を測定した。その後、同場所で草地構造パラメータとして、コドラート法により草高、冠部被度(イネ科、マメ科、雑草、裸地)を、刈り取り法により現存草量を測定した。FieldSpecで得られた分光反射率データをASTERのバンド帯毎に平均しそれらの関連を検討するとともに、草地構造パラメータとの関連を検討した。本年度得られた結果は以下の通りである。 1.同一地点で測定したFieldSpecとASTERの分光反射率を比較するとその反射特性はほぼ同様であった。 2.ASTERから得た可視赤(630-690nm)および近赤外(760-860nm)での分光反射率および正規化植生指数(NDVI)は生草収量、乾物収量および乾物率のいずれとも有意な相関関係(P<0.01)がみられたが、可視緑-黄(520-600nm)は関連がなかった。 これらのことから、FieldSpecの測定データから牧草収量を推定できると考えられ、衛星データと組み合わせることによって、より大面積の草地について正確な収量を簡易に推定できる可能性が示された。なお、草地構造パラメータとFieldSpecによる分光反射率との回帰式作成に向けての解析は現在進行中である。
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