研究概要 |
本研究の目的は、新規Hβ58遺伝子の発現とその機能の解析から初期胎盤の成立機構への理解を深めることにある。 本年度は、Hβ58遺伝子ヘテロ(+/-)マウスを交配し、Hβ58遺伝子欠損(-/-)マウスを作製した。Hβ58遺伝子欠損マウスは胎生9.5日目で死に至るので、胎生6.5日と7.5日目の胎盤を含む胎児とその野生型WTの胎児を取り出し、RNAの抽出を行った。さらに、これらのサンプルをcDNAに変換、cRNA作製時にDigでラベルを行いDNAアレイで解析した。それらのデータを元に、サブトラクション解析を行ったところ、細胞内輸送タンパク関連遺伝子や接着因子群遺伝子に変化がみられた。驚いたことに、この遺伝子の欠損は核・クロマチン構成因子群の遺伝子にも変化をもたらしていた。現在、これらのデータは韓国生命工学院と米国カンザス州立大学においてバイオインフォーマティックスによる解析が行われている。 遺伝子欠損マウスのみを使用する研究には、繁殖効率が低く時間がかかりすぎるので、マウス胚芽細胞の作出を行った。これにはSV40 long terminal遺伝子発現コンストラクトの導入が必要であったが、WT,ヘテロ、ホモ(-/-)の細胞株(MEF)を樹立することが出来た。現在Journal of Biological Chemistry投稿中の論文は、MEF細胞を中心にHβ58の機能に迫ったものである。
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