[目的]ヒトでは特別な疾病がない限り空腹時における血糖値は110mg/dlを越えることはなく、200mg/dlを越える場合には糖尿病が疑われる。糖尿病を発症して血糖値が恒常的に高くなると、最終的に網膜症、腎症、神経障害などの合併症を誘発する。これらの合併症は、高血糖状態の持続に伴うブドウ糖代謝産物であるソルビトールの蓄積及び非酵素的蛋白質糖化反応による終末糖化物質(AGE)の生成が原因となっている。ここで、家禽は古くから高血糖動物として知られており、血糖値は200mg/(dlを越えている。また、AGEの形成は非酵素的反応であるため高血糖であれば必ずAGEが形成されるはずである。しかしながら、ニワトリにおいてAGEの産生や代謝について調査した報告は極めて少ない。そこで本研究では、ニワトリに^<14>Cで標識したAGEを投与し、組織におけるAGEの取り込み具合を調査することを目的とした。[方法]U-^<14>C-グルコースとニワトリ血清アルブミンを混合した溶液を37℃で6ヶ月間保温し、^<14>C-AGEを調製した。8日齢の単冠白色レグホン種雄の翼下静脈から、1羽当たり600Bqの^<14>C-AGEを投与した。投与30分後に、浅胸筋、深胸筋、心臓、肺、腺胃、筋胃、十二指腸、空回腸、盲腸、結直腸、肝臓、腎臓、精巣、脾臓、眼球、大脳、中脳、小脳、皮膚を採取し、組織中に取り込まれた放射能量を測定した。[結果]組織全体における放射能取り込み量を比較したところ、肝臓における^<14>C-AGEの取り込みが最も多くなり、次いで腎臓、小腸の順となった。組織1g当たりの放射能取り込み量を比較したところ、肝臓と脾臓が最も多くなり、次いで腎臓、精巣の順となった。以上の結果より、ニワトリでは肝臓、脾臓、腎臓に特異的にAGEが蓄積することが明らかになり、これらの組織においてAGEが特異的に代謝されている可能性も考えられた。
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