未成熟ブタ精巣からパーコールグラディエント遠心法によって精粗細胞分画を分離し、D-MEM培地内で培養した。培養後、1週間で胚性幹細胞(ES細胞)様のコロニーが出現した。これらのコロニーは、精粗細胞特異的マーカーといわれているα-6-インテグリンに対して陽性反応を示し、精粗細胞から分化したType A spermatocyteのマーカーとして知られるc-kitに対しては陰性反応を示した。コロニーをトリプシン処理により細胞を回収し、再び継代培養したところ、同様のコロニーを形成するとともに凍結保存に対しても耐性を示した。これらのことから、本実験によって得られたコロニーは、精粗細胞由来の幹細胞株である可能性が示唆された。しかし、これまでブタにおける精粗細胞の特異的マーカーは報告がなく、本実験においてもα-6-インテグリンの陽性反応を確認したにすぎない。また、ヌードマウス精巣内へのコロニーの注入も試みているが、成熟した精子への細胞分化は確認されていない。さらに、ヌードマウス皮下への注入によって、テラトーマ形成等が認められなっかことから、コロニーの未分化性についても必ずしも明瞭になっているわけではない。今後、精粗細胞の特異的マーカーについて組織学的、分子生物学的に同定するとともに、精粗細胞の培養条件についてさらに検討を加えたい。
|