研究課題
鹿児島県下で採取されたマタニ(Haemaphysalis hystricis)から検出されたトリパノソーマ原虫(KG1株)についてその生物学的、遺伝学的性状を検討した。本原虫は、HEK293T細胞をフィーダーとしてL929培地で培養が可能であったが、フィーダー細胞無しでは培養は不可能であった。また培養した原虫をダニ(Ornithodoros moubata)の体腔に注入し、一定時間後に臓器、ヘモリンフを回収し、塗抹染色標本を作製し、原虫を検索したところトリポマスティゴートあるいはエピマスティゴート様形態を示す虫体が検出できた。このことからツェツェバエで媒介されるトリパノソーマ種と同様のライフサイクルをダニ体内で保有していることが推察された。18および28sリボソームRMA遺伝子領域ならびにITS領域を解析し、他のトリパノソーマ、その他類縁種との系統解析を行った結果、病原性の高いトリパノソーマ種(T.brucei, T.simiae and T.congolense)とは系統発生的に離れており、Bodo, Crithidiaなど低〜無病原性のキネトプラスト目原虫と類縁であることが明らかにできた。KG1株をマウス、ウサギ、ヒツジに接種したが血液中での増殖は認められなかった。またT.evansiを抗原としてラマを免疫し、一本鎖抗体を含む抗血清を作製し、表面抗原(VSG)型が明らかに異なるT.bruceiライセートに対してウエスタンブロット解析を実施したが、VSG間の交差反応性は明瞭ではなかった。
すべて 2007
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Parasitology (印刷中)
Infection and Immunity 75(4)
ページ: 1878-1885