本研究は、マウスミルク中に見られるL-amino acid oxidase(LAO)酵素の生理的・生化学的性状を明らかにすることで、乳腺退行因子としての可能性を探るものである。本年度の成果として以下に報告する。 1.LAO酵素の生体内における役割を明確にするには、LAOノックアウトマウスの作成が急務かつ必要不可欠であると考え、最優先実験としてその作成を開始した。すでに3匹の雄キメラマウスが得られており、内1匹のキメラマウスからアグーチ色の仔マウスが生まれている。近日中にジェノタイピングを行う予定である。次年度は、このLAOノックアウトマウスを用いた解析を行い多くの知見が得られるものと期待される。 2.組換えLAOタンパクの作成を進めている。過去の報告においてヘビ毒中に見られるLAO酵素のホモログタンパクは大腸菌系では低活性を示したことから、我々は哺乳細胞系での作成を試みている。pcDNA-HisMaxベクターとCOS-7細胞を使用し、Medium中のLAOタンパクをHis-tagカラムにて精製した。また、ウエスタンブロッティングによりLAOタンパクの産生を確認した。しかし、LAO活性の指標となる過酸化水素発生能は予想したものより低かった。現在、精製方法等に変更を加え、再作成中である。 3.LAO酵素の基質となるアミノ酸の細胞内外レベルセンサーとして知られるmTORシグナルの関与を、そのマーカーであるp70S6 kinaseおよび4E-BP1抗体を用いてウエスタンブロッティングにより確認した。その結果、泌乳期間を通して両タンパクとも高い発現レベルを示し、離乳とともに低下する傾向が見られた。リン酸化程度は現在解析中である。
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