研究概要 |
本研究の目的は,受胎産物-子宮内膜との相互作用の解析のツールとして,新規細胞株を樹立することであった。さらに,マウスからの胎盤および子宮内膜の各構成細胞株を樹立し,それらの細胞株からオルガノイド(再構築組織様塊)を作成し,このオルガノイドと受胎産物あるいは子宮内膜との相互作用の解析から,着床の分子機構を明らかにしようとした。本年度は子宮上皮細胞と子宮腺上皮細胞の株化を試みた。培養液には基本的な10%ウシ胎子血清/ダルベッコ変法イーグル培地を用いた。さらに,エストロジェンおよびLIFに対する細胞株の応答性を検討した。具体的には,子宮上皮細胞と子宮腺上皮細胞クローンに対しエストロジェンを添加し,ウェスタンブロッティングによりLIFの分泌能の検定を行った。 通常マウスの結果は,組織・細胞の初代培養において,多くの細胞はGO期に突入し,増殖を停止し,数週間から数ヶ月で死亡した。また,子宮上皮細胞に対しては,LIFを添加した結果,シグナル伝達物質STAT3のリン酸化が起きたが,子宮腺上皮細胞にはさらなる検討が必要である。従って,子宮上皮細胞に対しては,この検定法により,株化した多数のクローンの選別を行うことが可能であるが,子宮腺上皮細胞は工夫が必要で来年度の課題事項としたい。同様の解析および培養法を用いて,p16KOマウスでは,現在30世代を経過した多数の株化細胞を樹立したが,クローンの選別にはさらなる検討が必要であることが判明したので,これも来年度の課題にする。 これらの細胞株を円筒状に培養させ,子宮様再構築組織の作成を試みているが,上皮および腺上皮いずれも円筒状形態で培養できることには成功したが,導管部が構築されなかったので,この点も工夫の必要がある。
|