研究概要 |
本研究の目的は,受胎産物-子宮内膜との相互作用の解析のツールとして,新規細胞株を樹立することであった。さらに,マウスからの胎盤および子宮内膜の各構成細胞株を樹立し,それらの細胞株からオルガノイド(再構築組織様塊)を作成し,このオルガノイドと受胎産物あるいは子宮内膜との相互作用の解析から,着床の分子機構を明らかにしようとした。本年度は,昨年度までに株化した子宮上皮細胞と子宮腺上皮細胞の性状を解析した。そのために,培養液には基本的な10%ウシ胎子血清/ダルベッコ変法イーグル培地を用い,エストロジェンおよびLIFに対する細胞株の応答性を検討した。子宮上皮細胞と子宮腺上皮細胞クローンに対しエストロジェンを添加し,ウェスタンブロッティングによりLIFの分泌能の検定を行った。 子宮上皮細胞に対しては,LIFを添加した結果,シグナル伝達物質STAT3のリン酸化が起き,クローン細胞のエストロジェン添加培養はLIF分泌能を示したが,子宮腺上皮細胞には変化がみられなかった。細胞培養に細胞外マトリックスコーティングディッシュ(ECM-D)を使用した際に,上皮細胞の極性に影響が現れ,ECM-Dの種類によって極性が変化した。さらに,エストロジェン添加によりその極性は著しい変化を示し,これらの変化が着床に関与していることが疑われた。着床現象は細胞外マトリックスと密接な関係にあるので,細胞外マトリックスと上皮細胞の極性の関係を検討する必要がある。これは来年度の課題として検討することにする。 これらの細胞株を円筒状に培養し,子宮様再構築組織の作成を試み,上皮および腺上皮いずれも円筒状形態で培養できることには昨年度成功しているが,導管部が構築されず,細胞の極性を検討していなかったので,この点も来年度の課題としたい。
|