研究概要 |
ウイルスは、動物・植物から細菌に至るまで地球上の殆どの生物に普遍的に認められている。近年、原虫(単細胞原生動物)にもいくつかのウイルス様粒子の観察例の報告はあるが、その正体はいまだに謎のまま残されている。そこで、本研究では原虫に感染するウイルスの正体の解明を目指す。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。 1)cDNAライブラリーの構築:イヌバベシア原虫(Babesia gibsoni、NRCPD株)をビーグル犬に感染し、原虫感染率が約10%に上昇した時に、血液を採集した。白血球分画を除去したのちに、原虫感染赤血球よりAGPC法を用いてTotal RNAを調製した。その内5μgを使用しG-Capping法にてcDNAを合成し、pGCAPベクターに2本鎖cDNAがインサートされたプラスミドをフェノール抽出後エタノール沈殿により回収し、TEに溶解した。得られたプラスミド溶液をDH12Sコンピテント細胞と混合し、エレクトロポレーション法により形質転換を行い、寒天培地に蒔いて培養した。得られたcDNAライブラリーのサイズは約1x10^5個の形質転換体を含むものであった。 2)cDNAクローンの解析:上記完全長cDNAライブラリーからランダムに約10,000クローンを選択し、塩基配列を解読した。BLAST検索を行ったところ、1,257種類の遺伝子が同定された。得られたデータを基に、ESTデータベースを作成した。 3)推定ウイルス由来遺伝子の同定:相同性検索の結果、幾つかのウイルス由来遺伝子と推定されるクローンを同定でき、その解析を行ってきた。
|