研究概要 |
本研究の目的は、冬期の我が国沿岸海域における腸炎ビブリオの生息実態とその機序の究明に向けて、静岡県清水湾内外の沿岸海域に生息する無脊椎動物における腸炎ビブリオの保菌および同海域の海泥における同菌の生息分布を、海水温との関連において明らかにすることにある。 静岡県清水湾内外の沿岸海域8ヶ所において月1回、無脊椎動物、海水、海泥を採取した。海水温度、塩分濃度、pHもあわせて測定した。採取した試料は、アルカリペプトン水による増菌培養とクロモアガーによる選択分離培養を組み合わせた方法(Hara-Kudo, Kumagai et al.,Appl.Environ.Microbiol.,2001,67,5819-23)により、また、汚染菌数をMPN法によって確認し、分離した菌についてはPCR(プライマー:Tox R)によって、腸炎ビブリオであることを確認した。水温が15℃未満まで低下した2月において採取した試料からは、腸炎ビブリオが検出されなかった。水温が20℃以上の時期においては、巻貝を含め多数の試料から腸炎ビブリオが検出され、場所によっては海水から極めて高い菌数が認められた。クロモアガー上でビブリオ・バルニフィカス様の菌が高頻度で認められたが、次年度PCRで確認する。 分離した菌の血清型別およびパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)は現在進行中であり、次年度、酸、浸透圧、熱などのストレスに対する耐性を調べるとともに、低温下における生存期間やバイオフィルム生成能を測定する。
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