研究課題
本研究の目的は、PPARγの免疫担当細胞に対する抑制作用に着目し、アトピー性皮膚炎の新たな病態発生メカニズムの解析と治療法の基礎を確立することである。本年度得られた知見は以下の通りである。1.生後10週齢以上で、すでにアトピー性皮膚炎を発症しているNC/Ngaマウスに、一日一回PPARγのアゴニスト(ロシグリタゾン)を経口投与し、臨床症状スコアーの推移および掻爬行動を記録した。8週間にわたり薬物の投与を行ったが、顕著な治療効果は得られなかった。そこで、予防実験として、まだ皮膚炎を発症していない生後4-5週齢のNC/Ngaマウスにロシグリタゾンを経口投与し、臨床症状スコアと掻爬行動を経時的に記録した。試験終了時(投与開始より8週後)に、被験マウスから脾臓・リンパ節を採取して、重量を測定するとともにBリンパ球およびTリンパ球のプロファイルを調べた。また、皮膚を採取し組織学的検討を加えるとともに、血漿総IgE値を調べた。ロシグリタゾンを経口投与したマウスでは、皮膚炎症状の発現が有意に遅延し、掻爬行動回数が抑制されていた。非投与マウスと比べ、脾臓やリンパ節の重量が小さく抑えられており、特にBリンパ球の増加が抑制されていた。組織学的にも、投与マウスではアレルギー性炎症が抑止されており、血漿IgE値も低かったことから、PPARγアゴニストの投与はアトピー性皮膚炎の予防効果があることが明らかになった。2.アトピーマウスの免疫担当細胞におけるPPARγの機能の解析に関するin vitro試験として、PPARγアゴニストを用いて肥満細胞に対する増殖抑制効果を検討したが、顕著な阻害作用は認められなかった。In vivo試験で、Bリンパ球に対する増殖抑制効果が認められたことから、マウス脾臓由来のBリンパ球を用いて、in vitroのIgE産生に対するPPARγアゴニストの抑制効果を検討している。
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