マメ科作物のルーピンの根圏土壌と根圏外土壌からDNAを抽出する際に、種々の土壌からのDNA抽出手法の比較検討を行った。その結果、iSOILを用いることによって最大量のDNAが獲得されることが明らかとなった。しかしながら、根圏土壌から回収されるDNA量は少量であるため、MDA(Multiple Displacement Amplification)法を用いて全てのDNAを増幅する可能性を検討した。基質とするDNA濃度を調整することにより、古細菌、細菌、真菌のいずれにおいても存在するDNAが均等に増幅することをDGGE (Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法を用いて明らかにした。根圏土壌と根圏外土壌のDNAを用いて、SSH (Suppressive Substractive Hybridization)法によって根圏土壌に多く存在している遺伝子を獲得することに成功した。現在約300個のクローンを作成し、これらについて塩基配列を順次決定している。塩基配列の決定には16S rRNA遺伝子の配列を用いた種の推定および、ランダムに得られた遺伝子配列からその機能の推定を試みている。16S rRNA遺伝子の配列からは、根圏土壌には比較的既知の微生物が多く棲息していることが明らかになった。また、ランダムに得られた遺伝子からは、ストレス耐性に関与する遺伝子と相同性があるものなどが獲得されてきているが、現時点では明確な傾向は見て取れない。来年度にかけて、より多くの遺伝子情報を集める必要がある。
|