研究概要 |
農耕地においては硝酸性窒素による地下水汚染ならびに温室効果ガスである亜酸化二窒素(N_2O)の生成が大きな環境問題となっている。これらを解決するためには「脱窒の制御」が望まれる。そのためには、従来ブラックボックスであった、土壌において脱窒反応を活発に行っている微生物のメンバーを明らかにする必要がある。本研究は環境中で実際に機能している微生物集団を特定する方法であるStable Isotope Probing法を湛水土壌に適用して行い、「湛水土壌で実際に脱窒に寄与している土壌微生物メンバーの同定」を行い、脱窒の制御へ向けての基礎的情報を得ることを目的として行った。 水田土壌(東大田無農場から採取)に硝酸ナトリウムと13Cで標識した脱窒菌の基質を添加してバイアルびんに入れ、気相をアルゴン-アセチレン混合ガスで置換してインキュベートした。インキュベートの条件は平成17年度に決定した通りである。インキュベート後、土壌からDNAを抽出し、密度勾配超遠心により13C-DNAと12C-DNAとを分画し、13C-DNAを回収した。このDNAを鋳型として16S rRNA遺伝子をPCR増幅し、クローニング・シーケンスを行った。 約50クローンについてシーケンスし、データベースによる相同性検索を行った結果、この土壌インキュベート系においてはDenitratisoma, DechloromonasなどのRhodocyclaceaeに属する脱窒菌群が優占していること、また、Oxalobacteraceaeに属する細菌群が出現していることが明らかになった。
|