研究課題
血液、リンパ液、体液には、直径50-100nmの膜で包まれた小胞が存在し、一般にエキソソーム(exosome)と呼ばれ、細胞膜から分泌されている(RNAのプロセシング粒子とは異なる)。抗原提示細胞から出されるexosomeは、MHC class I, IIを膜表面にもち、T細胞を活性化することが知られている。また、前立腺上皮から分泌され精液中に存在する小胞(prostasome)は精子の運動や受精に関わり、ショウジョウバエ成虫原基の小胞(argosome)は発生過程でモルフォゲンの運搬体として働き、細胞間の情報伝達や物質の授受を行なう新しいタイプの細胞間伝達様式を担っていると考えられている。HIVなどの膜被覆ウイルスもいわばexosomeの特殊形態と考えられる。生理的条件下において、exosomeがどのように形成・分泌され、また、どのように作用するのか生理機能もまだよく分かっていない。本研究は、exosomeの形成と分泌および細胞間での授受に焦点をあて、関与する因子の追跡方法を確立するとともに、システムの分子基盤を明らかにすることを目的として実験を行った。CD63は、4回膜貫通蛋白質であり、細胞外へ放出されるexosomeに含まれる因子として知られている。CD63の細胞質ドメインのC末端側にルシフェラーゼを融合させた発現プラスミドを構築し、動物細胞にトランスフェクションしたのち、培地中に含まれるルシフェラーゼ活性を測定したがぐ顕著な活性の検出が認められなかった。一方、マウス白血病レトロウイルス(MLV)のGagタンパク質にルシフェラーゼを融合させると、培地中に活性が認められ、超遠心後の沈殿画分に検出された。また、多胞性エンドソーム形成に関与するCHMP4bを融合させたGFPを共発現するとGag-ルシフェラーゼの放出が抑制された。細胞外に放出されるウイルス様粒子が形質膜から直接出芽により放出されるのか、あるいは多胞性エンドソームを介してエキソソームの形態で放出されるのかは、MLVの場合には不明であるが、ルシフェラーゼを用いたアッセイ法が細胞外放出のモニターに有効であることが分かった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Biochemical Journal 391
ページ: 677-685
Biosci.Biotech.Biochem. 69
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