研究概要 |
血液、リンパ球、体液には、直径50-100nmの膜で包まれた小胞が存在し、一般にエキソソーム(exosome)と称され、細胞膜から分泌されている。抗原提示細胞から分泌されるエキソソームは、MHC class I,IIを膜表面にもち、T細胞を活性化することが知られている。ヒト免疫不全ウイルスHIVなど膜被覆ウイルスもいわばエキソソームの特殊形態と考えられる。レトロウイルスの細胞外放出(出芽)に関わる因子が明らかにされつつあり、ESCRT(endosomal sorting complex required for transport)因子群の役割が注目を浴びている。ESCRTは、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれた膜表面上の受容体がさらにエンドソーム膜の内部に陥入(出芽)する過程に作用すると考えられている。生理的条件下において、エキソソームがどのように形成、分泌されるのか、その機構はまだよく分かっていないが、内部に多くの小胞をもつ多胞性エンドソームが形質膜と融合し、内部の小胞が放出されると想像される。本研究は、レトロウイルスの出芽をエキソソーム分泌制御モデルとして焦点をあてて実験を行い、新しいESCRT-III関連因子CHMP7の機能を解析した。CHMP7は他のESCRT-III因子(分子量約2万)と異なり、サイズが2倍あり、N末端側にユニークな領域をもつ。CHMP7は同じくESCRT-IIIに属すCHMP4と相互作用すること、集合したESCRT-IIIを解離させる働きをもつAAA,型ATPase Vps4B変異体SKD1^<E235Q>を発現すると異常なエンドソームを形成するがCHMP7も集積すること、CHMP7-GFPを過剰発現させるとマウスレトロウイルスGagによって形成されるウイルス様粒子の培地中への放出が減少することを明らかにした。ESCRT-IのTSG101ならびにCHMP4と相互作用するAlixは、カルシウム結合蛋白質ALG-2とカルシウム依存的に結合するが、ウイルス様粒子の放出におよぼすカルシウムイオンの影響を調べたが、実験系が不安定であり、有意な効果を検出することはできなかった。
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