研究概要 |
植物におけるシアル酸の存在の有無を再検討し、もしシアル酸が存在するならば、さらに植物におけるシアル酸の生合成経路を解明することを証明することを目的に、順次以下を進めた。(1)植物におけるシアル酸の同定:これまで我々がサツマイモ、ジャガイモの総脂質画分中に見いだした、普通のシアル酸(Neu5Ac、Neu5Gc)と異なるNeu5Ac類縁体成分を同定することを目指した。しかし、天然産物ではこの成分が本当に植物成分由来であるかどうか、環境からの混入の可能性がないかどうかについてはっきりするためには、培養液の成分がはっきりしている条件で培養できる培養細胞からの成分同定が重要であることがわかり、タバコBY2細胞について調べ、同様の成分が確認された。(2)タバコBY2培養細胞を用いたシアル酸誘導体の同定:(1)でタバコBY-2細胞中に確認されたシアル酸類縁体成分について、増殖段階特異的な発現を調べたところ、細胞増殖期よりも定常期において、発現が増加することが判明した。Neu5Acα2,6Gal構造に結合する植物レクチンSSAを用いて調べた結果、糖タンパク質成分としてSSA反応性の数種の成分が確認されたが、SSA反応性成分は酵素に対する反応性や化学的性質において普通のシアル酸とは異なっていた。現在、構造解析中である。(3)植物細胞におけるシアル酸誘導体の生合成機構の解析:今年度はまずタバコBY-2細胞にNeu5Acそのものを取り込ませて、このシアル酸関連分子の量的変化を追跡した。BY2細胞は増殖段階依存的にシアル酸を取り込み、蓄積することが判明した。今後プロトプラストを調製して同様の蓄積効率が高まることを確認し、その取り込みの分子機構を調べる。
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