昨年度に引き続き、植物におけるシアル酸の存在の有無を再検討し、もしシアル酸が存在するならば、植物におけるシアル酸の生合成経路を解明することを目的にして、以下のことを行った。(1)タバコBY2培養細胞を用いたシアル酸誘導体の同定:昨年度、2-ケト-3-デオキシ酸構造をもちシアル酸類縁体と思われる水溶性化合物であるSiaXおよびSiaY、また比色反応からシアル酸類縁体と考えられる脂溶性化合物であるSiaZについて、まず、これらが定常期において最大発現量となることを見いだした。次に、定常期細胞から、これらの化合物を精製し、その構造解析を行った結果、SiaZはシアル酸骨格をもたないベンゼン環をもつ化合物であると推定された。一方、SiaXとSiaYについては、部分精製の段階での解析からシアル酸と似た大きさをもつことが判明した。また、シアル酸を認識するSSAレクチン反応性糖タンパク質においても、SiaYに相当する分子が見いだされた。(2)植物細胞におけるシアル酸誘導体の生合成機構の解析:まずタバコBYL2.細胞は、Neu5Acそのものを取り込むことが判明した。今年度、さらにプロトプラストを調製して調べた結果、同様の蓄積が起こることが判明した。しかし、その蓄積も最初の数時間で一定になり、取り込みとともに分解、代謝されることが推定された。しかし、新たな誘導体は見いだされなかった。この2年間の研究期間において、まず、植物においては、動物で見いだされる典型的なシアル酸は存在しないこと、次に、シアル酸類縁体としては、既に明らかにされているKDOの他に、未同定の類縁体が存在していることが明らかになった。今後、継続してその類縁体の構造決定を行う予定である。なお、2年間で国内の学会発表を1件ポスターで行った。
|