研究概要 |
直腸での水分吸収に関わる水チャネル(アクアポリン:AQP)のはたらきを遺伝子レベルで増強すれば,直腸の管腔内の内容物は極端に固くなり,排泄不能(ヒトでいう便秘)になる結果,消化管系が閉塞状態に陥り,食下量も低下し,害虫による作物の摂食被害が軽減されると予想される。本研究では直腸のアクアポリンの遺伝子発現を調節することによって,新奇な害虫制御の方策を目指した基礎研究が可能であるかどうかを検証するために計画した。 本研究ではカイコをモデル実験系に用い,直腸のアクアポリン遺伝子として2つのcDNAクローンを特定した。そして,カイコの形質転換系を利用して直腸での水の過剰な再吸収が誘導できるかどうかをバキュロウイルスベクターへ直腸アクアポリンのcDNAを組み込んで検証したが,この1年間の研究では,明瞭な便秘の効果を個体レベルで確認することはできなかった。特定遺伝子を直腸にターゲッティングする方法を見いだすことが必要であると考えている。そのためにも直腸アクアポリンのゲノム解析も今後必要である。また,カイコのアクアポリンの機能解析の基礎的な研究も続けることも,個体全体での浸透圧調節・水分管理の観点から,急務であると考えている。
|