分子認識を契機として、分子が自己分子或は他分子を識別して相補的な集合を形成し、その結果、定まった形をもつ三次元空間を構築する。こうした自他の認識・識別、集合化、外部刺激による集合系の解除と自発修復、さらに分子集合ネットワーク空間の構築能力と機能性を持つ低分子を、知的分子として概念化、創製し、更には知的分子の自己及び自他集合化によって構築され、定まった形を持つ三次元空間を駆動系反応場とする選択的反応の開拓することを挑戦課題として研究を行い、以下の成果をあげた。 1 ジアミド分子の両アミド基を連結するメチレン鎖中に窒素を導入し、三方向にアルキルアミド末端を持つトリアミドを合成し、様々な溶媒に対する最小ゲル化濃度を測定した。その結果そのもの自身のゲル可能力は高くないものの、その塩酸塩がメタノールと水の混合物をゲル化することを見いだした。 2 両アミド基の直鎖上の向きを逆転させ、アミドカルボニル部位及び水との水素結合部位となる酒石酸を基本骨格とするジアミド分子を合成し様々な溶媒に対する最小ゲル化濃度を測定したところ、ヒドロゲル形成には至らなかったものの、水酸基を持たないコハク酸類縁体と比べて高いゲル化能力を示すことを見いだした。 3 異なるメチレン鎖を持つ2種類のジアミド分子の共存下DSC熱測定を行い、それぞれのジアミド分子が自己を厳密に認識し、同じメチレン鎖を持つジアミド分子同士でそれぞれ分子集合を形成していることを明らかにした。
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