研究概要 |
今までにない構造をもったアデニン選択性のホスト分子、5-6-5員環を基礎骨格とし側鎖に二つのカルバモイル基をもつ、ピリジンビスオキサゾイルカーバメイト体を合成した。このホスト分子は、アデニン塩基とWatson-Crick型とHoogsteen型の水素結合により正確な多点水素結合を形成した。この多点水素結合は、1H NMRおよび分子軌道法計算(B3LYP/6-31G*)により検証した。このホスト分子はクロロホルム中で脂溶性アデノシン誘導体に対して蛍光応答を伴い高い選択性を示した。その選択性をホストとアデニン塩基との錯形成定数で比較すると、他の核酸塩基のそれに対して100倍以上であった。このホストをポリ塩化ビニル担持膜に埋め込みイオン選択性電極として核酸誘導体を分析したところ、5'-GMP,5'-CMP,5'-UMPに比べて、5'-AMPは高い選択的応答を示した。これは、水溶性核酸ゲスト分子をこのホスト分子は膜界面で識別したことを示す。 今回開発したホスト分子のアデニン塩基との錯形成定数向上を水素結合とπ-πスタッキング相互作用を組み合わせることによりおこなった。多点水素結合部の機能を保持した上で、π-πスタッキング部位を追加するために環状構造としてナフタレン構造を導入することとした。多点水素結合とπ-πスタッキング相互作用が効果的に作用する構造を分子軌道法計算(B3LYP16/31G*わにより解析し、多点水素結合部位とπ-πスタッキング部位を結合するリンカー炭素は4,6,8が適していると考えた。設計した分子を合成し、核酸塩基との錯形成能を1H NMRと蛍光分光法で評価した。リンカー炭素は6が最適であり、多点水素結合単独のホストに比べて、多点水素結合とπ-πスタッキング相互作用を組み合わせたホストは、アデニン塩基で錯形成定数が7倍向上した。
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