一般酸-塩基触媒機構によって触媒される酵素エンドポリガラクツロナーゼの反応を、水素(プロトン)の状態を含めて理解するため、水素を含めた構造決定が可能な中性子結晶構造解析および超高分解能X線結晶構造解析を行った。また、基質認識機構を解明するため、酵素基質複合体結晶のX線結晶構造解析を行った。 (1)中性子結晶構造解析:中性子解析用に必要な巨大結晶を作成するためマクロシーディング法を用いた結果、約4ミリ立法の結晶を作成することに成功した。その際、生成物ガラクツロン酸との複合体結晶とした。測定のバックグランド低減と複合体の形成のため、ガラクツロン酸2%とMPD10%を含む重水母液に対し結晶を透析した。測定は、日本原子力研究所のBIX-4において行い、1.5Åの中性子回折強度データを得た。解析の結果、ガラクツロン酸の結合を確認し、その結合に関与する水素結合の方向を可視化することに成功した。現在さらに構造の精密化を行っている。 (2)超高分解能X線構造解析:高い分解能のデータ収集が可能な結晶を得るためには、クライオプロテクタントの条件の再検討が必要であった。再検討の結果、15%イソプロパノールと2%ガラクツロン酸を含む溶液が最適であった。さらなる分解能の向上を目的とし、約40Kのヘリウム気流下で測定を行った。SPring-8のBL-41XUにおいて、大面積CCDを使用してデータの収集を行った。その結果、0.60Å分解能に達する超高分解能のデータを得た。解析の結果、多数のマルチプルコンフォメーションが確認でき、さらには多数の水素原子が2Fo-Fc電子密度図上で確認できた。現在、得られたデータを用いて水素原子を含めた構造精密化を継続している。
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