研究概要 |
放線菌Streptomyces albusが産生するRheAは,熱を感知して可逆的にその構造が変化するサーモセンシング機能を有するリプレッサータンパク質である。本研究では,RheAのサーモセンシング機能を構造生物学的に明らかにするとともに,その機能を医療における分子スイッチに応用することを目的としている。 本年度は,RheAタンパク質の立体構造をX線結晶構造解析するため,RheAの大量発現,精製,結晶化,およびX線回折実験を行った。RheAは大腸菌の宿主・ベクター系を利用して大量発現させた。次に、そのタンパク質の精製をニッケルアフィニティーカラムを用いて行った。これにより,ヒスチジンタグ付きの精製RheAを大量に取得できた。シッティングドロップ蒸気拡散法を用いて結晶化を行った結果,RheAの結晶を得ることはできなかったが,RheAとオペレーターDNA(21mer)との複合体結晶を得ることに成功した。しかしながら,銅Kα線をX線源としてX線回折実験を行った結果,得られた複合体結晶は構造解析に十分な回折強度データを与えるものではないことが判明した。この原因として,RheAに付加したヒスチジンタグの影響が考えられたことから,次に,天然型RheA(native RheA)の発現系の構築および精製系の確立を試みた。本年度は,種々のカラムを駆使することにより,native RheAの精製系を確立できた。次年度は,精製native RheAの結晶化ならびにX線結晶構造解析を行うとともに,その知見を分子スイッチの開発へ応用することを目指す。また,他の放線菌にRheA様のリプレッサータンパク質が存在するか否かも調査する。
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