昨年度までの検討により、脂肪組織血管内皮細胞を標的とするprohibitin結合モチーフ(ペプチド)CKGGRAKDC標識-亜鉛包埋リポソーム(metal-avidin-liposome)を安定に作製することに成功した。MALは培養ヒト血管内皮細胞(HUVEC)へ特異的に結合し、細胞内部へ取り込まれた。またMAL添加によりHUVEC細胞内メタロチオネイン(MT)mRNA及びMTタンパクレベルは、有意に増加した。この効果は遊離Znの1/3の濃度で起こった。 次いで、MAL(Zn量として、80μmol/Kg体重)を高脂肪食にて肥満化させたICRマウス尾静脈より投与した。投与彼のZnの臓器分布を解析した所、肝臓のZn含量に著しい増加が認められた。増加量から推定される投与亜鉛の肝臓への分布割合は80%と推定された。脂肪組織におけるZn含量はわずかに増加傾向が見られるのみであったが、MT mRNAレベルの有為な増加が認められた。同量のZnを含み標識量の蛍光物質CFを含むMALを用いて組織分布像を解析した結果、肝臓ではリポソームの凝集体が単球様細胞に貪色されている観察増を得た。一方、脂肪組織では血管腔にリポソームに由来すると考えられる蛍光斑点が認められた。 以上より、MALは100%血清中では凝集化し、肝網内系に大部分捕捉され、脂肪組織へは十分量分布しない事が判明した。今後リポソーム性状の改良が必要である。
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