研究課題
本研究は外傷性脳損傷直後にPGD_2が過剰に産生されて炎症が拡大されるメカニズムの解明である。本年度は、以下の研究と結果を得た。1)外傷性脳損傷に対するPGD受容体の関与。過剰産生されたPGD_2が2つの受容体(DP1、DP2)のいずれを介して炎症の拡大に作用するのかをそれぞれに特異的な拮抗薬(BWA868C,ラマトロバン)をマウスに経口投与し、損傷の程度(浮腫)を局所への色素漏出量を指標に評価したところ、いずれの化合物も有意に浮腫を抑制した。この効果は組織学的解析によっても確認された。薬理学的解析結果らは、損傷の拡大にはDP1、DP2いずれも介することが確認された。さらにDP1受容体欠損マウスを用いて損傷モデル実験を行ったところ、野生型に比べて損傷拡大が軽微であった。DP1受容体を免疫組織化学的に調べたところ、損傷部位と正常部位の境界あるアストロサイトで発現が昂進していた。2)外傷性脳損傷に対するPGD合成酵素阻害薬の効果。PGD合成酵素特異的阻害薬(HQL-79)の投与は損傷(浮腫)の拡大を抑制することが判明した。この浮腫抑制作用は、上記の受容体拮抗薬の投与に比べて強力であった。HQL-79は、損傷直後に過剰に産生されるPGD_2を有意に抑制した。この結果から、損傷時に過剰生産されるPGD_2が炎症を拡大させることを薬理学的に確認した。この抑制作用を遺伝子レベルで確認する為に、損傷部位の遺伝子の変動を調べたところ、HQL-79投与群ではアストロサイトの活性化の指標であるGFAP遺伝子発現が対照群に比べて有意に抑制された。損傷直後に産生されたPGD_2はDP1、DP2の受容体を介して炎症を拡大させることが示された。
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