研究概要 |
本研究計画は、非小細胞肺癌に対するイレッサ(ゲフィチニブ)の分子標的抗腫瘍効果の関連性が指摘されているEGFR遺伝子のキナーゼ領域(エクソン18,19,20および21)において多発する腫瘍特異的変異(塩基置換点または十数塩基対の欠失)の分子機序を解明することである。一般に、特異的な部位または領域に塩基置換が多くみられるようなホットスポット領域は、小さな塩基対のスリップ構造を形成する配列が存在することが知られている。一方、エクソン19における12〜18塩基対の欠失に対しては、何らかの非B-DNA型のDNA高次構造がその領域週辺に存在し、そのようなゲノムの不安定性に関与している可能性がある。 平成17年度は以下の2点から着手した。1)EGFR遺伝子変異領域内または近傍に遺伝的不安定性をもたらすシス作用性DNA領域、すなわち非B-DNA型のDNA高次構造の存在を探ることを目的とした。そこで、EGFR遺伝子のエクソン18、19、20および21に対して、エクソンから近傍のイントロン配列まで広げた範囲の中で、様々な長さをもつDNA断片(100〜約2000塩基対)をPCRにより生成し、大腸菌クローニングベクターへの組み込みを行った。現在、これらのベクターを様々な大腸菌宿主中で増殖させ、挿入配列を含むプラスミドDNAの安定性と複製回数や大腸菌種との関連性の検討を開始した。さらに、化学的または酵素学的検出方法により挿入領域における非B-DNA型構造の存在を検討する予定である。2)EGFR遺伝子の不安定性を起因する因子の探索を目的とした。DNAマイクロアレイを用いたトランスクリプトーム解析により、種々の肺癌細胞の遺伝子発現レベルの検討ならびにデータマイニングを行っている。
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