研究課題
イノシトールリン脂質は細胞内シグナル伝達系の重要な因子で、細胞増殖・癌化あるいは老化等に関与する。従って、イノシトールリン脂質の等価体として機能する分子は、細胞内シグナル伝達系解析のための生物学ツールあるいは創薬リードとして有用である。本研究では、イノシトールリン脂質のmyo-イノシトール骨格をC-グルコシドでミミックしたホシファチジルC-グルコシドを設計・合成し、その生物活性、特に重要なシグナル伝達分子であるホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)あるいはホスソリパーゼC(PLC)に対する阻害活性を調べ、イノシトールを基本骨格としない、構造的にも機能的にも斬新なイノシトールリン脂質等価体の創製を目的とする。D-グルコースはmyo-イノシトール同様の6員環いす型構造とトランスジオールを有することから、D-グルコース構造でPI及びPIP_2のイノシトール部をミミック可能と推論し、さらに代謝的及び化学的安定性を考慮し、C-グルコシドを骨格とするPI及びPIP_2等価体を設計した。これらは、イノシトール3位に相当する位置(グルコース5位)に水酸基が存在しないここから、この部位を認識するPI及びPIP_2の重要な代謝酵素であり、また制癌剤分子標的と想定されるPI3Kの阻害剤となることを期待した。3,4位にリン酸基を持たない目的物の合成を目指して研究を進めた。前年度合成した、目的物の極性頭部に相当するa-C-グルコシドをアクセプターとして、ホスホリパーゼ(PLD)の触媒するホスファチジル基転移反応によりリン脂質への変換を検討した。その結果、アシル基として飽和型パルミトイル基あるいは不飽和型のオレオイイル基を有するα-C-グルコシド型PI等価体の合成に成功した。
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