研究課題
これまで脂質は単に細胞膜の構成要素とのみ考えられてきた。しかしスフィンゴシンー1-リン酸(S1P)の細胞間情報伝達物質として機能が大きく注目されてきた。われわれはS1Pの細胎内での役割を明らかにするため、生理活性セラミド・スフィンゴシン誘導体を新規合成し、それらをプローブとして細胞死あるいは生存のメカニズムを探索し、新たな選択的細胞死保護剤又は促進剤の開発を目的として研究を行った。光学活性ガーナーアルデヒドを出発原料としブロモフェニル化、2級アルコールの酸化、ジアステレオ選択的還元を経て光学活性2-アミノー3-フェニルプロパンー1,3-ジオール誘導体を合成した。続いてブロモフェニル基に対し種々のカップリング反応を行い炭素鎖長の異なるアルキル、アルケニル、アルキニル鎖を導入した。最後に1位水酸基をリン酸エステルとし活性評価した。新規合成した各スフィンゴシン-1-リン酸誘導体の薬効評価を培養神経細胞PC12細胞を用いて行った。その結果、側鎖長が長いものの方がアラキドン酸放出活性が強い事、アルケニル体は活性を示さずアルカン及びアルキン側鎖を有する化合物が活性を示した。一方、1位リン酸誘導体は全く活性を示さなかった。またPLA2alphaサブタイプのうち分泌型PLA2を選択的に活性化しアラキドン酸放出を促進することを見出した。これらの発見は、これまで明確ではなかったスフィンゴシン-1-リン酸とアラキドン酸放出の関係を解明する有用なツールが開発できた事を意味し、今後さちに脂質誘導体の細胞内における役割の解明に役立つ事が期待される。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件)
J. Med. Chem. 50巻
ページ: 442-454