有機アニオントランスポーターであるLiver-specific organic anion transporter(LST)-2は、ウアバイン、ジゴキシン、胆汁酸を基質とし、とりわけ消化器固形癌に強く発現してメトトレキセートの取り込みに関与することが知られている。したがって、本トランスポーターを活用することにより、消化器固形癌選択的に薬物を輸送できるものと考えられる。そこで今回、標的癌細胞へのターゲッティングのキーマテリアルとなるLST-2の細胞外ドメインを認識するモノクローナル抗体を調製するとともに、蛍光標識胆汁酸を用いてLST-2の基質輸送能の評価システムの構築を試みた。 まず、LST-2特有の膜表面構造であり、かつ翻訳後修飾の影響を受けないと考えられるアミノ酸609-623(TM_<11-12>:AQGACRIYNSVFFGR)をターゲットとし、これをKLHと結合したタンパク質複合体を免疫原として用いることとした。これを免疫したBALB/cマウスの脾細胞をミエローマ細胞と融合し、HAT選択を経てモノクローナル抗体を調製した。本抗体の特性を競合ELISAにより解析したところ、エピトープとして用いたTM_<11-12>ペプチドを明確に認識することが判明した。さらに、アデノウイルスベクターにより、LST-2を一過性発現させたHepG2細胞の可溶化液を用いてイムノブロット解析を行ったところ、LST-2に相当する約120kDaのバンドが検出された。以上の結果から、今回調製したモノクローナル抗TM_<11-12>ペプチド抗体は、イムノブロット解析によるLST-2の発現量評価のツールとしてきわめて有用であることが明らかとなった。 次に、5種の遊離型胆汁酸をそれぞれ活性エステルに誘導し、N^ε-CBZ-リジンを作用させた後、C末端カルボキシル基をメチル化した。次いで、接触還元によりCBZを脱離した後、重炭酸ナトリウム存在下、NBD-C1と反応させ、アルカリ加水分解により目的とする胆汁酸のN^ε-NBD-リジン抱合体を得た。次いで、LST-2を強制発現した細胞の各蛍光標識胆汁酸の取り込みを比較したところ、ステロイド骨格の差異により取り込み能に明確に差のあることが明らかとなった。
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