研究課題/領域番号 |
17659044
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大森 栄 信州大学, 医学部附属病院, 教授 (70169069)
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研究分担者 |
松永 民秀 信州大学, 医学部附属病院, 助教授 (40209581)
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キーワード | サル / 胚性幹細胞 / 肝細胞 / 分化 / 薬物代謝酵素 / シトクロムP450 / HNF-3β / GATA-4 |
研究概要 |
【目的】胚性幹細胞(ES細胞)は、臨床応用だけではなく、薬物動態試験が可能な肝細胞を得るなど、創薬研究への利用も期待されている。しかし、サルES細胞から肝細胞への分化誘導に関する研究はこれまでほとんど行われていない。本研究は、カニクイザルES細胞から肝細胞への分化と、分化過程から見出した新規シトクロムP450(CYP)の酵素化学的性質を明らかにすることを目的とした。 【方法】サルES細胞をポリプロピレン製コニカルチューブで培養する方法により胚様体(EB)を作成した。ES細胞の分化はEBをコラーゲン処理したプレートに接着させ、最長30日間培養することにより行った。肝細胞マーカーおよびCYP遺伝子の発現はRT-PCR法により解析した。また、新規CYPの酵素化学的性質を明らかにするため、発現ベクターを構築し、代謝活性の測定を行った。 【結果と考察】EBの培養を行ったところ、自律拍動が観察されたことから、一部心筋細胞への分化が推察された。また、EB培養10日目に肝細胞マーカーであるα-フェトプロテイン、15日目にアルブミンおよびCYP7A1遺伝子の発現が認められたことにより肝細胞へ分化していることが示唆された。さらに、薬物代謝型分子種であり、主に肝細胞に発現することが知られているCYP1A1のmRNA発現はEB培養5日目から、CYP3A66は10日目から、CYP2C20、CYP2D17やCYP3A8は15日目から発現していた。なお、CYP7A1とCYP3A8のmRNAは培養15日目よりも30日目の方が多く発現していた。また、ヒト胎児肝細胞に特異的に発現するCYP3A7と高い相同性を有する新規CYPをサルES細胞から分化した細胞より見出し、その全塩基配列を明らかにした。このCYPは、テストステロン6β-水酸化およびデヒドロエピアンドロステロン16α-水酸化活性を有することが明らかとなった。以上の結果より、サルES細胞は、今回用いた方法により肝細胞へ分化誘導されることが明らかとなった。また、サルES細胞を選択的に肝細胞に分化させる系を確立するため、ヒトHNF-3βcDNAを増幅し、発現プラスミドを構築、リポフェクション法にて導入することによりES細胞で発現することを確認した。
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