本研究の目標は、分子間相互作用の液中原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy ; AFM)によるイメージングである。前年度得られた基礎データをもとに、本年度はまず、液中でのDNAそのもののイメージングに関する測定条件の検討を行った。 具体的には、劈開したマイカ上に付着させたDNAを液中でAFM観察するための最適な方法を検討した。はじめに、液中環境でもDNAがマイカから離れないようなマイカの表面処理を、マグネシウムイオン、ポリーL-リジン、スペルミジン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いて比較したところ、ポリーL-リジンによる処理がDNAをもっとも安定的にマイカ上に付着することがわかった。またDNAはpUCI8DNA(2686 base-pairs)、pBluescriptII-(2959 base-pairs)、pBR322DNA(4361 base-pairs)をそれぞれ観察したが、その中で、pUC18DNAのイメージングが比較的良好であった。探針については、V字型、窒化シリコン製でバネ定数が0.32N/mのカンチレバーと、テトラヘドラル型、シリコン製でバネ定数が0.09N/mのカンチレバーを用い、測定方法はタッピングモードで観察した。Q値は1から3程度で、特にQコントロールを使用しなくてもイメージングは可能であった。 次に、Tris-HClバッファー(pH7.5)の中でpUCI8DNAを液中AFM観察した後、制限酵素(ScaI)を加えて反応を起こさせながら、引き続きイメージングを行った。DNAと制限酵素のそれぞれの局在がイメージングできたが、制限酵素の動きを追跡することはやや困難であった。DNAと制限酵素の濃度をさらに検討し、AFMの走査スピードを上げる工夫を加えれば、もっと詳細なイメージングが可能になると考えられた。
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