外生殖器の発生分化に関与する分子とその役割を調べるため、マウス胎児の生殖器における分子の発現をin situ hybridizationにより調べた。その結果、生殖結節が出現する前の胎齢10.5日胎児の尿生殖洞にFgf8とFgf10が発現していた。11.5日にはFgf8の発現が遠位尿道(尿道板)上皮にまで広がっていた。Fgf8の発現は11.5日にピークに達し、14.5日まで次第に減弱した。一方、Fgf10は生殖結節の間葉に発現し、それは11.5日から14.5日にかけて増強した。なお、他の重要なFGF分子であるFgf4は、生殖結節の形成時に明らかな発現を認めなかった。次に、生殖結節におけるBmp4の発現を調べたところ、11.5日胎児生殖結節の背側間葉に発現が認められた。Sonic hedgehog(Shh)遺伝子は、はじめ排泄腔上皮に発現し、次第に遠位尿道の上皮へと発現が広がった。遠位尿道におけるShhの発現はFgf8のそれとオーバーラップしていた。さらに、Msx1遺伝子が生殖結節の間葉に、Wnt 5aがその遠位部間葉に発現しており、これらの複数の遺伝子が外生殖器の形成に密接に関与していることが示された。顕微解剖法で遠位尿道上皮を除去したところ、生殖結節の発育が有意に障害され、また抗Fgf8抗体を加えて器官培養を行った場合にも同様の結果が得られた。さらに、妊娠マウスにレチノイン酸(RA)を投与したところ、胎児の生殖結節腹側部の分化が障害されたことから、RAと下流遺伝子の関与について今後解明を進める予定である。
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