研究概要 |
発生には様々な遺伝子が関与することが知られている。我々は幹細胞システムにランダムに発生段階の遺伝子を導入することにより、幹細胞の形質変化を検討するという方法を考案した。我々は膵管由来膵幹細胞の単離に成功した。この細胞はpdx-1遺伝子が陽性で膵管の特徴であるCK19遺伝子を発現しており、増殖力があり、継代培養やクローン化も可能である。この細胞は培養条件により、膵内分泌細胞、膵外分泌細胞、肝細胞に分化する。このような安定した膵幹細胞を維持する方法論は我々独自のものである。本研究では膵幹細胞システムを用いて、膵発生に関連する遺伝子を網羅的に検索することを目的とする。 我々はpolyoma T抗原を用いた、複製作用を利用し、エピゾーマルベクター導入により遺伝子を安定発現させるES細胞系(MG1.19細胞)および導入ベクター(pPyCAGベクター)を開発している。このシステムを膵幹細胞に応用することにより、多くの遺伝子のスクリーニングを効率よく行うことが可能である。 そこで、膵幹細胞の遺伝子に対する遺伝子導入の効果をスクリーニングする目的で、平成17年度には、上述のエピゾーマルベクター導入により遺伝子を安定発現させることが可能な細胞を作成した。この細胞にpolyoma oriを有するベクターを導入し、発現ベクターの維持に関する検討をEGFP発現ベクターを用いて行ったところ、1ヶ月後も蛍光を確認可能で長期間の発現維持が確認できた。また同時にEGFP, asREDの発現ベクターを同時に遺伝子導入したところ、ほとんどの細胞はこの2種類の蛍光を呈し、多種の発現ベクターの導入も可能であると考えられる。今後、このシステムを用いて、転写因子遺伝子の大規模なスクリーニングを行う予定である。
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