研究課題
研究代表者は以前遂行したシグナルシークエンストラップによる検索で、CSNと仮称した新規小胞体膜タンパク質の分子同定した。CSNは酸性アミノ酸に富む小胞体内腔領域、小胞体膜貫通セグメント、約45kdよりなる細胞質領域から構成される。N未側の内腔領域はCa2+結合活性を有し、小胞体のCa2+保持に寄与するものと考えられた。CSNノックアウトマウスは胎生期と新生期に致死性を示すことから、その生理的重要性が明らかである。蛍光色素法による細胞生理学実験系において、CSN欠損線維芽細胞では小胞体Ca2+保持能力の低下と容量依存性Ca2+流入機構の減弱が観察された。これらの異常は、CSN全長の機能発現により回復するが、その細胞質領域を欠損した分子では回復しない。従って、CSNは小胞体のCa2+ハンドリングに極めて重要な分子であることが明らかになった。さらに、ツニカマイシンやタプシガルギンによる小胞体ストレス誘導により、CSN欠損線維芽細胞では細胞死の亢進が観察された。この結果は、小胞体Ca2+ハンドリングの減衰により、Ca2+シグナル依存性の細胞サバイバル機構が部分的に破綻していることを示唆する。以上主に培養細胞系における実験成果に基づき、CSNをcaluminと命名し、データを取りまとめて論文発表を行った。一方、Calumin欠損マウスがなぜ胎児期と新生期に致死となるのかは依然として不明であり、上述の細胞レベルでの機能と個体発生との関連が注目される。現在、その致死性の詳細解析を進めている。
すべて 2007
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Cell Calcium (in press)