研究概要 |
前年度までの研究において、開口放出を感知する蛍光タンパク質、VAMP-pHluorinをthy1.2プロモータの制御下に発現するトランスジェニックマウスを作成した。このマウスの1系統においては、海馬苔状線維終末特異的にVAMP-pHluorinを発現していることが確認された(Araki et al. 2005)。本研究課題においては、このマウス海馬急性スライスを用いて単一の苔状線維終末からの開口放出を計測できることについて報告した(Araki et al.,Society for Neuroscience Abstract 380.13)。また、VAMP-pHluorinをCre/loxP組み換えシステムを利用してコンディショナルに発現するトランスジェニックマウスを用いて、海馬急性スライスのCA3錐体細胞終末における開口放出を計測できることについても報告した(Araki et al.,Society for Neuroscience Abstract 380.13)。しかし、活動電位に伴う開口放出を光学計測するにあたり、S/N比を向上させる必要があるので、研究を継続している。最近の研究成果については、2006年の日本神経科学学会に報告する(京都、7月)。これと平行して、単一苔状線維終末における開口放出制御機構を解明する目的で、この終末に分布する電位依存性カルシウムチャネルサブタイプを同定した。前年度までの研究において、N, P/Q, R, Lの少なくとも4種類のカルシウムチャネルサブタイプが存在していることを報告した(Tokunaga et al.,2004)が、単一シナプス前終末においては、サブタイプ構成が終末ごとに異なるパタンを示すことを見出した。特に、NタイプとRタイプの分布に大きなばらつきが認められた(Miyazaki et al.,2005)。これらの研究を促進する目的で、緑藻類の一種のクラミドモナスの光受容体チャネルchannelrhodopsin-2を海馬神経細胞に遺伝子工学的に発現させることにより、単一神経細胞を光刺激する方法を開発した(Ishizuka et al.,2006)。
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