研究概要 |
昨年度までの研究を発展させ、synaptopHluorinの遺伝子をThy1.2遺伝子プロモーター制御下に発現するマウス(Araki et al. 2005)を用いて、海馬の単一の苔状線維終末における開口放出のダイナミクスとその可塑性を解析した。この結果、以下の新しい事実を見出した:(1)プロテインキナーゼC(PKC)により、開口放出が促進されること、(2)この促進が放出可能な小胞数の増加と小胞の開口放出確率の両方の増加によること、(3)どちらのメカニズムが優位に用いられるかにより、タイプ1,2,3の3種類の応答に分類されること、(4)タイプ3の応答には、開口放出能を持たない終末が可塑的に開口放出を獲得するものが含まれること、(5)どのタイプに属するかはシナプス前終末ごとに異なること。本研究の成果については、日本神経科学大会(京都、2006年7月)、Fifth East Asian Biophysics Symposium & Forty-Fourth Annual Meeting of the Biophysical Society of Japan(沖縄、2006年11月)、日本生理学会大会(大阪、2007年3月)などにおいて報告した。すなわち、遺伝子改変動物を用いた生体開口放出システムにより、単一シナプス前終末を共焦点顕微鏡下に同定しながら、今までにない高い精度で開口放出ダイナミクスを解析できることが示された。よって、本研究の当初の主要な目的が果たされた。しかし、さらにS/N比の向上をはかる必要性があり、このためには、開口放出光学プローブの改良や測定システムの改良をふくむ本研究の発展的継続が必要であることが明らかになった。
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