研究概要 |
破骨細胞は骨芽細胞とともに骨形成を制御する。最近我々は破骨細胞に、免疫系において重要な役割を担っているイムノグロブリン様受容体分子群が発現し、破骨細胞の分化を制御している可能性を指摘した。本年度の研究では発現するイムノグロブリン様受容体(IgLR)分子群のうち,どの受容体が実際に分化プロセスの制御に関与しているのかを同定し,これらのリガンドの同定と発現場所を突き止め,骨疾患においてリガンド-受容体相互作用の変調がその原因となっている可能性を検討することを目的とした。ヒトやマウスのどのIgLRが破骨細胞に発現しているのかを生化学的,細胞生物学的側面から,さらにGene Chipを利用した網羅的手法により解析した。正常ヒト末梢血から単離した単球を培養下に破骨細胞に分化させる実験系を構築し、このヒト骨芽細胞のGene Chip解析を行い,発現が変化するIgLRの網羅的データを得た。注目すべきデータとしてLeukocyte Immunoglobulin-like Receptor(LILR)-Bの抑制タイプであるLILRBが破骨細胞に顕著な発現を示し、とりわけLILRB4の発現は破骨細胞に特徴的であり、マクロファージなど他の骨髄系細胞に比べて高い発現レベルを示した。LILRB4を抗体で刺激すると細胞内に抑制性シグナル伝達が惹起され、破骨細胞の分化誘導が阻害されることが分かった。したがってLILRのコントロールを行うことでヒト破骨細胞の分化制御が可能であることが示唆された。またマウス破骨細胞にはヒトLILRBに相当するPaired Immunoglobulin-like Receptor(PIR)-Bが発現し、ヒト破骨細胞におけるものと同等の役割を担う可能性が示唆された。
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