研究課題/領域番号 |
17659082
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉野 健一 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 助手 (90280792)
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研究分担者 |
大城 紀子 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 助手 (70372662)
吉川 潮 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (40150354)
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キーワード | mTOR / 核酸生合成 / mLST8 / ピリミジン生合成 / アミノ酸 / ラパマイシン / 細胞成長 / WDドメイン |
研究概要 |
再狭窄抑制剤、T細胞増殖抑制剤、抗がん剤としての薬効が注目されている薬剤ラパマイシンの哺乳動物細胞内の標的タンパク質がmammalian Target of Rapamycin(mTOR)である。mTORはアミノ酸濃度などの細胞が活発に増殖できる環境条件を感知し、細胞成長制御システムを司る情報伝達系の中枢の分子と考えられている。 細胞増殖は、細胞分裂と細胞成長の2種の独立した生物現象が融合した生物システムによって進行している。また細胞増殖にはDNA複製が不可欠であり、そのためには原料となるプリンヌクレオチド、ピリミジンヌクレオチドが大量に必要となる。これらの核酸生合成はグルタミンやアスパラギン酸、グリシンなどのアミノ酸を原料とし、核酸の新生にはアミノ酸が不可欠である。細胞の分裂に必要なDNAを複製するためには原料となる大量のアミノ酸を必要とすることから、我々は細胞環境中のアミノ酸濃度を感知するmTORを中枢としたシステムと核酸生合成系とが深く関わっているのではないかと考え、これを裏付ける分子の探索を行った。 mTOR複合体を構成するraptorおよびmLST8にタグを付加した分子をHEK293細胞に発現させ、共精製される分子を質量分析法により同定した。相互作用する分子の中で核酸生合成に関与する分子を探索したところ、ピリミジン生合成経路において重要な役割を担っている分子が見出された。 この分子はraptorおよびmLST8のWDドメインと相互作用しており、作成した抗体を用い、内因性の分子間相互作用を確認することもできた。この分子とmTORとの関連はこれまで全く知られておらず、本成果はmTORが核酸生合成経路にも関与していること初めて示唆するものである。今後はこの分子とmTORとの機能的な関連を解析し、mTORの核酸生合成制御機構の解明を進めていく。
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