私はミトコンドリア外膜に特異的に局在する新規ミトコンドリアユビキチンリガーゼMITOLの同定に成功した。MITOLはユビキチンリガーゼ活性に必要なPHD領域と細胞膜を4回貫通するユニークな構造を有している。MITOLの発現をRNAi法によりノックダウンするとミトコンドリアの断片化や運動に大きな支障をきたすことを見いだした。私たちはMITOLがミトコンドリア分裂因子であるFis1やDrp1と結合し、ユビキチン化することを見いだした。したがって、MITOLがミトコンドリア分裂因子を基質にすることによりミトコンドリアダイナミクスを調節している可能性が示唆された。さらに、MITOLがミトコンドリア蛋白質の品質管理に関与していることが示唆された。これまでの成果を現在、論文投稿中である。さらにMITOLのミトコンドリアにおける役割を分子レベルで詳細に解析するために会合蛋白質の同定を試みた。その結果、HSP70が同定された。この結果はMITOLがミトコンドリア蛋白質の品質管理に関連している可能性をさらに強めた。また、MITOLをRNAi法によりノックダウンした細胞においては、変性蛋白質の蓄積が観察されたことより、ミトコンドリアが細胞内において変性蛋白質の消去に関与していること、およびパーキンソン病に見られる変性蛋白質の蓄積がミトコンドリア機能異常に起因することから、MITOLと神経変性疾患との関連性も示唆された。今後、トランスジェニックマウスを用いてさらに解析する予定である。
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