研究分担者の前濱は、癌抑制遺伝子PTENと結合する分子を酵母ツーハイブリッド法でスクリーニングし、PICT1を見出した。PICT1遺伝子はヒトグリオーマなどの脳腫瘍で高頻度に欠失する染色体19番長腕のD19S241EとD19S596の間の遺伝子座に存在し、PTENのC末と結合することによって、PTEN蛋白質のリン酸化を促進し、これによって、PTEN蛋白の崩壊を安定させることを見出した。またRNAi法によりPICT1の発現を抑制すると、PTENの蛋白質やそのリン酸化が減少し、また細胞増殖が亢進することから、PICT1はPTENを標的とする新規の癌抑制遺伝子候補遺伝子である可能性を見出した。PICT1は主に核小体に発現し、一部は細胞質に局在する。研究代表者の鈴木らは、ヒトグリオーマのみならず、皮膚がん、子宮頸がん、外陰部がん、膵臓がんなどで、高頻度にPICT1の発現が低下していることも見出している。さらに鈴木らはPICT1遺伝子ホモ欠損マウスを作成したところ、PICT1ホモ欠損マウスは、多くの他の癌抑制遺伝子ホモ欠損マウスと同様に、胎生早期に致死であったことから、発生に必須の分子であることを新規に見出した。さらにPICT1欠損ES細胞を樹立し、この分子が細胞増殖や細胞死に関与する分子であることを明らかにした。また研究分担者の佐々木らは、Cre-loxPシステムを用いてPICT1組織特異的欠損マウスの作成を完了した。
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