研究概要 |
本課題では食細胞の機能が無秩序に亢進して自己の血液細胞を貪食する疾患である血球貪食症候群の分子機序の原因解明をめざした。まず先天的血球貪食症候群の原因遺伝子として知られているRab27A, Bについて各種血液細胞における発現量をウエスタンブロッティング法により解析した。ヒト骨髄性白血病細胞株であるHL60ではRab27Aが、巨核球系細胞株であるCMKではRab27Bが主に発現していることを確認した。そこでHL60をマクロファージ様(ビタミシD3+TPA)および好中球様(レチノイン酸)に分化して食細胞のモデルとして用い、Rab27Aが貪食の活性化と制御に果たす役割を解析した。Rab27Aは好中球様の分化により顕著に発現が上昇しマクロファージ様分化により微増した。Rab27A-shRNA永久発現型HL60(Rab27A-shRNA/HL60)を樹立した。Rab27A-shRNA/HL60では好中球様分化においてその分解能に関わる酸性顆粒の減少と分様核の異常が認められた。この影響は野生型Rab27Aの導入により回復し大量発現により過剰な顆粒の上昇を誘導した。現在GTP結合型(Q78L)およびGDP結合型(T23N)のrab27aをRab27A-shRNA/HL60に導入して好中球様分化への影響を解析している。さらに貪食される細胞のモデルとしてCMKを想定し、Flag-結合型Rab27A(Flag-Rab27A/CMK)を作成して細胞表面の補体制御因子の発現への影響を検討するとともに、食細胞様に分化したHL60とCMKを共培養し、野生型およびRab27A, B変異型の組み合わせにより、自己を貪食し得る状況を再構成してRab27A, Bが自己血球貪食に関わる分子機序の解析を進めている。
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