研究概要 |
脳におけるインプリンティングの役割を系統的に解析するために、マウス発生工学技術を駆使して片親由来2倍体神経細胞を作製することが我々の最終目標である。平成17年度は基礎的なマウス発生工学技術の確立をめざし、熊本大学生命資源研究・支援センター主催「平成17年度実験動物関係教職員高度技術研修」に参加し、採卵、採精、人工受精、ES細胞株の樹立、aggregation法によるキメラマウスの作製法を修得した。修得した技術は上記最終目標への基礎技術となるばかりでなく、以下の研究に利用され成果を上げている。 1.未受精卵、顆粒細胞におけるSnrpn, IC-transcriptの発現解析 これまでIC-transcriptは脳(神経細胞)においてのみ発現するとされていたが、未受精卵細胞においても発現することを共同研究者として報告した。未受精卵細胞塊から、卵を取り囲む顆粒細胞を遊離させ、純粋な未受精卵細胞のみを解析材料として供給した(J.Hum.Genet.2006)。 2.ノックアウトマウスの作製 aggregation法によるキメラマウス作製技術を確立するために、Engelmann病のモデルマウスの作製支援を行った。ES細胞にTT2ラインを用い、Engelmann病責任遺伝子であるTGF-beta1遺伝子のexon 4にEngelmann病と同じ一塩基置換を入れたノックアウトマウスの作製を行った。現在キメラマウスが成育中であり、germ line transmissionの有無を交配によって確認する予定である。 3.マウス初期胚におけるSnrpn遺伝子のメチル化解析 strainの異なるC57BL6,PWKマウスを交配したF1ハイブリッドを用い、初期胚(受精卵、桑実胚、胚盤胞)におけるSnrpn遺伝子のDNAメチル化獲得時期の解析を行っている。同F1ハイブリッドのES細胞の樹立も成功し、今後分化誘導、キメラマウス作製に用いる予定である。 4.雌核発生胚の作製 エタノール刺激、電気刺激による雌核発生胚の作製を試みている。2細胞までは分裂するものの以降の発生はなく、卵管移植による胚盤胞までの分化誘導を試みている。
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