研究概要 |
クローン病は潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患の代表的疾患であり,腸管全層を侵し,腸管穿孔,瘻孔形成,狭窄を起こす難治性疾患である.その原因は未だ不明であるが,遺伝的要因が関与する腸管局所免疫異常を背景とした多因子遺伝性疾患と認識されている.ペプチドを用いた罹患者の抗体をスクリーニングから候補分子を選定し,原因遺伝子探索を行うことを研究目的とした. ATP駆動型トランスポーターABC(ATP binding cassette)タンパクをコードする遺伝子群を候補と考え,クローン病210例を対象に健康成人212名,潰瘍性大腸炎205例を対照とし,MDR1,TAP1,TAR2のそれぞれの遺伝子の多型の解析を行っている。サイトカイン関連遺伝子の候補のうち,IL18遺伝子多型の解析は終了し,下記のごとく学術論文へ報告した.IL18遺伝子のプロモーター領域に存在する多型(-607C/A,-137G/C)および3種類のハプロタイプと炎症性腸疾患の関連を検討した.IL18遺伝子プロモーター領域の多型はクローン病の易罹患性に寄与する結果は得られず,報告者らがすでに2002年に明らかにした同遺伝子コドン35多型の関与と異なることがわかった.一方で,-607Aアレルは潰瘍性大腸炎罹患者群と有意な関連があり,特に直腸炎型の罹患者はハプロタイプ2(-60A,-137C)との関連が顕著であった.IL18遺伝子プロモーター領域多型は炎症性腸疾患のうち,潰瘍性大腸炎の易罹患性やその病変範囲に関連することを示唆する結果を得た.
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