研究概要 |
H.pyloriの標準株ATCC43504からDNAを抽出し、Cag A, Vac Aの全長の遺伝子をPCRで増幅してクローニングし、シークエンスで確認した。よく知られているように、H.pyloriは株ごとにCag A, Vac Aの塩基変異が多く存在し、これが病原性と深い関係がある。特に、Cag Aのチロシンリン酸化部位のリピートの数は重要で、標準株ATCC43504の場合は5回と最も多い方に属しており、病原性の強い性質を備えているものと推測される。Cag Aのチロシンを含む繰り返し配列部位は上皮細胞に注入された後に、細胞内のリン酸化蛋白でチロシン残基がリン酸化され、これによって細胞内にシグナル伝達が開始され、サイトカインなどの起炎分子の誘導が起こるとされている。 Cag A遺伝子をFLAGを含む発現ベクターとGFPを含む発現ベクターに組み込んで、まずHEK293T,AGSなどの培養細胞内での発現を観察した。ウエスタン・ブロッティングでは、予想されるよりもやや小さなところに陽性バンドが観察されたが、このバンドはTagの抗体とCag A特異的抗体で陽性となり、培養細胞内での発現がうまくいっているものと解釈された。 現在、TagつきのCag A遺伝子をshuttle vectorであるH.pylori発現ベクター(pHel2)に改変中で、大腸菌でまず発現させ、クロラムフェニコールで選択した後に、H.pyloriに遺伝子導入する予定である。
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