1.Crypt FISH(fluorescence in situ hybridization)を用いた細胞内染色体シグナルの観察 腺管分離法で得られた正常大腸腺管および大腸癌腺管についてcrypt FISHを行い、17番染色体数を観察した。正常及び癌腺管のいずれでも、腺管構築を保ったまま細胞内染色体シグナルの検出が可能であったが、細胞の重積により従来の蛍光顕微鏡下でのシグナル数の計測は困難であった。共焦点レーザー顕微鏡(LSM)を用いたシグナル数の計測は正常腺管では可能であったが、一回の解析で10個程度の細胞しか計測できなかった。正常腺管では腺管内の位置にかかわらず細胞はdisomyであり、heterogeneityは認めなかった。癌腺管ではシグナル数は増加していたが、細胞の重積が強く、シグナル数の計測が可能な領域は限られ、癌腺管内でのheterogeneityは評価できなかった。LSMを用いたシグナル数の計測は実用性に欠けると思われたが、crypt FISHを用いることで癌の形態像と染色体数異常の比較が可能となり、今後はシグナル数の効率的な計測法を確立することが必要と思われた。 2.FISH arrayによる大腸癌における17番染色体数的異常の解析 大腸癌分離腺管から細胞を単離し、スライドグラス上に6箇所のスポット状に展開した塗沫標本(FISH array)を作製し、FISH法にて17番染色体数的異常の検出を行った。48例中40例(83.3%)に有意な染色体数的異常が認められた。モード値ではtrisomyが26例(54.2%)、tetrasomyが14例(29.2%)であった。同一腫瘍内の染色体数のheterogeneityは30例(62.5%)で観察された。腺管分離材料を用いたFISH arrayの使用により、正常細胞の混入のないFISHシグナル数の計測を効率的に行うことが可能であった。
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