本研究ではCre-lox遺伝子挿入系を用い、ゲノム上の特定部位(前もって導入したlox部位)に二本鎖のsiRNAを発現する構築を正確に単一コピー挿入することによって、確実にRNA干渉をおこなう細胞株の作製を目的とする。また、この系ではloxターゲティングプラスミドに2個以上のRNA干渉コンストラクトを挿入することができるため、同時に複数の遺伝子のノックダウンをすることも目指す。 本年度は、当初、ヒト子宮頸部がん細胞株HeLaを用いてCre-lox遺伝子挿入系を作製する予定であったが、HeLa細胞のゲノム不安定性のため、自然発生的に薬剤(ネオマイシン)耐性株が生じ、Cre-lox遺伝子挿入系によって得られたクローンの選択が困難であることが判明した。そのため、この系を改良し、HeLa細胞等、ゲノム不安定性を示す細胞でも使用が可能となるようにする一方、すでにCre-lox系が安定に働くマウスのL細胞を用いて本研究を進めることとした。 L細胞では単一コピーのlox部位を含む4細胞株(73-14、73-19、73-21、73-28)を用い、マウスRet finger protein(RFP)に対するRNA干渉コンストラクトをCre-lox遺伝子挿入系により導入したステーブル細胞株を作製した。今後、リアルタイムPCR法、ノザンブロッティング法によりRNAレベルでのRFPの変化を解析する一方、ウエスタンブロッティング法により蛋白レベルでの変化についても検討を加える。 また、HeLa細胞では初めにlox部位と共にプロモーター、N末の翻訳開始領域を欠く不活性なネオマイシン耐性遺伝子を導入したが、低い頻度でネオマイシン耐性株が生じることが問題であった。そのため、今回は単一のlox部位のみを含む細胞株を作製した。この系についても今後、解析を加えていく。
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