われわれはyeast two hybrid法により、Aktキナーゼの新規基質Girdinを同定した。昨年度までの研究により、Girdinはアクチン結合蛋白であり、Aktによりそのセリン1416がリン酸化を受け、アクチン線維の再構成を引き起こすことを明らかにした。さらにGirdin siRNA存在下において、細胞運動を著しく低下することから、Akt-Girdinシグナル伝達系の細胞運動における重要性を証明した。 本年度はAkt-Girdinシグナル伝達系の血管新生における役割についてHUVEC細胞を用いて検討した。HUVEC細胞をVEGF-Aで刺激することによりAktを活性化させると、Girdinのセリン1416がリン酸化され、PI3キナーゼのインヒビターやAkt siRNAを用いるとそのリン酸化が抑制されることを確認した。GirdinはHUVEC細胞におけるストレスファイバーやラメリポデイアなどのアクチン線維に一致して存在し、siRNAによってGirdinをノックダウンすると、ストレスファイバーやラメリポデイアの形成が障害された。GirdinをノックダウンしたHUVEC細胞は、マトリゲル上での管腔形成やボイデンチャンバーでの細胞遊走能が著しく障害された。以上の結果より、Akt-Girdinシグナル伝達系が血管新生にける細胞遊走および管腔形成に重要な役割を果たすことが示唆された。現在、マウスを用いたin vivoにおける系を用いて、Girdinの血管新生における機能の解析を進めている。
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