血管新生促進ペプチドSVVYGLRの虚血性心疾患に対する保護作用を検討するため、ラット心臓の左冠状動脈前下行枝を結紮し心筋梗塞を作製し、血管新生ペプチドを虚血領域に投与した。結紮3週間後、血管新生ペプチドの心筋梗塞に対する保護作用について、心エコーを用いて心機能(左室内径短縮率、左室駆出率、左室内径面積変化率)を評価し、さらに組織学的に心筋梗塞量の縮小効果についても検討を行った。さらに、梗塞近傍領域と非梗塞領域の血管密度、心筋細胞横径について計測を行った。 1)心エコー法により梗塞作成3週間後の心機能を評価した結果、血管新生ペプチド投与群では左室内径短縮率、左室駆出率、左室内径面積変化率ともに対照群に比較して有意な改善を認めた。 2)心筋梗塞量は、血管新生ペプチド投与群において対照群に比して有意に縮小した。 3)非梗塞領域における血管密度は、血管新生ペプチド投与群と対照群との間に有意な差は見られなかったが、梗塞近傍領域では血管新生ペプチド投与群で対照群に比較して有意に血管密度の増加が認められた。 4)梗塞近傍領域および非梗塞領域における心筋細胞横径および非梗塞領域の心筋線維化量については血管新生ペプチド投与群と対照群との間に有意な差は見られなかった。 以上より血管新生促進ペプチドSVVYGLRは、急性心筋梗塞において虚血周辺部より新たな血管の形成を誘導することにより心筋梗塞巣の拡大を防止し心機能を改善することが明らかとなった。
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