研究課題/領域番号 |
17659135
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
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研究分担者 |
中屋 隆明 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授 (80271633)
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キーワード | SARSコロナウイルス / Vero-E6 / 持続感染 / 細胞傷害性 / アポトーシス / 遺伝子変異 / レセプター / 中和抗体 |
研究概要 |
私たちは、SARS-コロナウイルス(CoV)に高感受性のVero E6細胞株への感染実験において、急性期の細胞傷害出現後も生き残っている一部の持続感染細胞の出現することを見出した。この細胞から細胞クローニングにより、ウイルスを産生し続ける持続感染クローン細胞(#21)を分離した。この細胞クローンは、長期間にわたって感染性のSARS-CoVを放出し続けているが、自身には細胞傷害を引き起こしていない。そこで、このクローン細胞内のSARS-CoVの30 kbにわたる全長のウイルスRNAの配列を決定し、種々の変異領域を同定した。この#21クローン細胞は感染性はあるが、エンベロープを構成しているS蛋白質の粒子への取り込みが低下しているが、その原因としてS蛋白質に認められた5アミノ酸残基の置換のうち2残基が関与していることを明らかにした。この変異は、S蛋白質とレセプターとの結合性を低下させる可能性、そして中和抗体エピトープの構造変化を招き、中和抗体との反応性に影響を与える可能性が示唆された。 また、SARS-CoVの増殖におけるlipidraftの意義について検討し、ウイルス複製の初期過程でその重要性が明らかになった。このlipidraft内には、SARS-CoVのレセプターであるACE2は存在しないことも明らかになった。したがって、今後、このraft構造がSARS-CoV複製にどのような機序で影響を与えているかを明らかにする必要がある。
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