本研究は、ナチュラルキラー(NK)細胞分化に必須な骨髄ストローマ細胞を同定するための新規in vivoシステムを開発しようとするものである。すなわち、致死量放射線照射したインターロイキン(IL)-15欠損マウス(NK細胞を欠損する)に、IL-15欠損マウス由来の骨髄細胞(NK細胞は欠くもののその前駆細胞は含んでいる)を移入する際に、野生型マウス由来の骨髄細胞(ストローマを含む)をともに移入することによってIL-15欠損前駆細胞からのNK細胞の分化を誘導しようとするものである。本年度は本システムの実用化の可能性を検証するとともに、その改良を行った。IL-15欠損マウス(Ly5.2)を致死量(9.5〜10Gy)の放射線で照射し、IL-15欠損マウス由来(Ly5.2)骨髄細胞を移入して骨髄キメラを作成する際に、同時に野生型マウス(Ly5.1)由来の骨髄細胞(supporting BM cellsと呼ぶ)を移入し、数週間後にIL-15欠損骨髄由来のNK細胞(Ly5.1^+)の細胞表面形質を解析したところ、IL-15欠損マウス由来のNK細胞が、移入前もしくは同時にsupporting BM cellsを移入しなかった場合には見られないMac1^<hi>Dx5^<hi>の成熟型細胞へと分化した。さらに別の成熟の指標であるLy49発現についてもその上昇を見た。したがって、この方法はNK細胞のIL-15による成熟にかかわるストローマ細胞の同定を可能にするシステムであることが明らかになった。また、このシステムの改良によって、わずか2週間の短期間でNK細胞の成熟を検出できるようになっている。さらに、すでにMac-1陽性の細胞がsupporting BM cellsとして機能しているという予備的観察をも行っており、その細胞のさらなる同定を進めている。
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